国税の『聖域』 巨大宗教法人 【中編】 ~落合博実『徴税権力 国税庁の研究』より~

 この本の引用シリーズを始めた翌日だったかに、民主党の石井一さんが、公明党の政教一致ぶりについて質問されたそうで、この記事も思わぬタイムリー記事になった感じが。

 それでは今回も、落合さんの本からの引用続けますね。


(前回の終わりから)

 今まで見てきたように、創価学会が並みの企業では太刀打ちできないほどの収入と資産を持っていることだけは間違いないだろう。

 ところが国税当局は、このような巨大な財力を誇る創価学会に対し、前述した90年、91年以外には、本格的な税務調査を一度も行っていないのである。

 果たして国税当局は、「課税の公平」をどれだけ貫けているのだろうか。「内部文書」を基に検証してみたい。

【以下、今回の引用開始】

▼中西金庫事件

 「内部文書」は、「宗教法人に対する調査の現状等」と題した記述から始まり、その中でこう「告白」する。

 <知名度の高い宗教法人、規模の大きな宗教法人やマスコミ等で話題となっている宗教法人(以下、「著名な宗教法人」という)についてみると、最近調査したものがある一方、長期間調査をしていないものがあり、法人によって調査間隔に格差がある(知名度の高い宗教法人ほど調査未接触期間が長い)>

 「別紙」には「著名な宗教法人」の調査時期が一覧表形式で記載されているが、確かに調査間隔には相当な“格差”があることがよくわかる。この“格差”を明らかにするために一部を例示しよう。

 <明治神宮   85年4月
  霊友会    85年8月
  生長の家   87年1月
  靖国神社   88年1月
  阿含宗    88年12月>

(左は宗教法人名、右は90年4月現在の最終調査時期)

 このように、全国に点在し、国税当局が「調査対象宗教法人」として選定した34宗教法人に対しては、ほぼ例外なく順番に調査が実施されている。だが、その中に調査の空白期間が際立つ宗教法人が一つあった。

 創価学会である。

 学会に調査が入ったのは、73年4月。「内部文書」が作られた90年4月時点でも、実に17年の歳月が経過している。さらに付け加えるならば、この73年調査も東京国税局本体が行ったものではなく、四谷税務署が「給与に関する源泉所得税の監査」のみ行ったものであり、学会の経理に本格的に切り込んだものではなかった

 徴税機関としてマネーの動向に常に関心を持ち、厳しくチェックする国税当局とは思えない鷹揚さである。平均して少なくとも3年に1度は調査を受けている一般企業と比較すれば、これがいかに「異様な事態」であるか、よく理解できるだろう。

 国税当局が学会への本格調査に乗り出す約一年前、私は国税幹部に対し、学会の税務調査を敬遠する理由を尋ねたことがある。彼は苦笑しながらこう言った。

 「宗教法人は税制面で優遇されていますから、非課税の部分が大きい。組織の大きな教団を調査するとなると、相当な人手と日数をかけねばならないですが、その割に実りが期待できないんですよ。今はバブル経済のフォロー調査等で優先しなければならない課題が山積していますから」

 では、国税当局の姿勢を一変させた直接のきっかけは何だったのか。「内部文書」には、明確に記載されていた。

<最近では創価学会については中西治雄の1億7000万円金庫事件以降学会の金銭問題等について各種マスコミ報道され、また、著名な新宗教に関してマスコミが特集を組むなど宗教法人の動向については社会的にも大きな関心を呼んでいるところであり、これら報道内容を含め、著名な宗教法人に対して税務執行面での適切な対処が一層必要となってきている>

 国税当局に重い腰を上げさせた「中西金庫事件」は、「学会マネー」の不可解さを世間に印象づける事件だった。

 まだバブル経済に列島が沸いていた89年6月30日、神奈川県横浜市旭区のゴミ処理場に捨てられていた古金庫の中から現金1億7000万円が見つかった。その三日後、「金庫も金も私個人のものです」と、ある男性が名乗り出る。「落とし主だ」と主張したのは、聖教新聞元専務理事の中西治雄(当時60)。戦後間もない1947年に創価学会に入会し、「池田名誉会長の金庫番」とも言われた人物の登場に世間は驚いた。

 中西は横浜市内で記者会見し、緊張した表情でこう釈明した。

「あの金は私個人のものです。70年頃から3年間、静岡県富士宮市の大石寺で金杯などの土産物を販売した利益で、聖教新聞地下の金庫に入れたまま忘れてしまいました。税金は払っていません」

 記者から「今の貨幣価値で5億円もするほどの大金を忘れたとは信じがたい。学会の金では」と追及されると、中西は要領を得ない説明を繰り返し、「自分の金です」と言い張った。中西は二度の記者会見以降、一切マスコミに対して口を閉ざす。真相は藪の中に消えた。

 課税時効はとっくに過ぎていたとはいえ、「金庫番」と言われた人物が自ら公の場で脱税行為を認めたのである。国税庁は学会を今までのように見過ごすわけにいかなくなった。

 そこでそれまでに集積されたデータを基に作成されたのが、件(くだん)の「内部文書」だった。「著名な宗教法人の調査について」というタイトルがつけられているように、あくまで表向きは「宗教法人全般の調査」を目的に作成されたという体裁がとられているが、学会をターゲットに据えて作成された文書だということは明らかだった。

 「内部文書」の最後の三ページには、創価大学、民主音楽協会、聖教新聞販売店、潮出版社など合計26の創価学会関係法人(現在は不倶戴天の敵になっている大石寺の名前もある)の代表者や所在地はもとより、最新の売上げ、所得金額、納税額、税務調査が行われた時期と結果等が手書きで詳細に記された一覧表、創価学会を頂点にした関連法人の関係チャート図まで記載されている。

 <平成元(1989)事務年度に調査時期が到来する著名な宗教法人に対する対応>が記されたページも興味深い。ここでは「(1)創価学会について」、「(2)創価学会以外の著名な宗教法人について」と項目が二分されている。(2)の内容はいかにもとってつけたようなものだが、目を引くのは、立正佼成会への対応について触れた次の記述である。

<創価学会とのバランスを考慮し、元事務年度中に調査することが適当である>

 立正佼成会以外にも学会と同時期に税務調査を受けた著名宗教法人はあるが、彼らもその調査がまさか「創価学会とのバランス」を考慮して行われたとは、夢にも思わなかったことだろう。学会に対する気の使いようが伝わってくる。

 一方、「(1)創価学会について」という記述は詳細を極めている。「別紙4」の「(宗)創価学会の法人税申告書等からの検討事項」と合わせて読み解くと、調査にあたって国税当局が絞り込んだ「標的」がはっきりとわかる。最初のターゲットは、全国に分散されている預金の実態把握だった。

<資料情報によると、奈良や三重県の銀行に創価学会名義の定期預金があるが、収益事業会計には計上されていない。預金を全国的に分散していると推定されるのでその実態把握に努める必要がある>

 続いて、それまでに当局が把握した地方銀行の定期預金の具体的な預金額と名義が列記されている。

<南都銀行本店(奈良)      定期預金2億9000万円  創価学会名義(63.12.31現存)
 第三銀行(旧第三相互銀行)  定期預金300万円     創価学会三重県広布名義(元.5.20満期)
 久居支店(津)          定期預金1000万円     創価学会名義(63.11.21満期)>

 そして、次の「確認対象」は、過去に投書などの形で国税当局にもたらされた情報(いわゆるタレコミ)である。

<第一庶務という秘書室にある金庫の中を調べると裏金がある>

<中西が裏金の総元締めである。2億円はかるく出てくる>

<山正友が週刊誌にいろいろ書いているが、7割は本当である>

<金品の受け取りが一杯あり、この中には簿外となっているものがある>

<東京、静岡で公判中(日原造園、山正友弁護士)の書類等を検討すれば、創価学会が多額の脱税をし、その不法収入が公明党へ政治資金として流出している(ことがわかる>

<会員から「代務」(筆者註=「財務」の誤りか)の名目で月1万円を徴収している。受取書の受取名義は「創価学会会長秋谷栄之助」であり、その額は多額となり、私腹を肥やしている>

 真偽不明で胡散臭いものが多いが、収集した情報はいかなるものであっても確認しようという国税当局のスタンスと律儀さが伝わってくる。

 その他、「文藝春秋」や「現代」などで報じられた「マスコミ情報」も、具体的に学会批判記事のポイントを抜き出す形で挙げられ、「課税上解明すべき事項がある」と指摘されていた。

▼池田名誉会長への関心

 注目すべきは、調査のターゲットとして創価学会だけにとどまらず、名誉会長の池田個人も視野に入っていた点だ。「内部文書」には、「課税上の問題」として、こうはっきりと記されている。

<池田大作個人に関しても、昭和63(1988)年9月2日の「創価学会の運営に関する質問主意書」(提出者大橋敏雄(衆))の中で、次のような課税上の質問があったこと>

 衆議院議員の大橋敏雄は、「文藝春秋」(1988年6月号)誌上で「池田大作への宣戦布告」と題した手記を発表、現職公明党国会議員による前代未聞の名誉会長批判を展開し、話題を呼んだ人物だ。雑誌発売の翌月、金銭問題等の「別件」を理由に公明党から除名処分を受けた大橋は同年9月、政府に対して、創価学会の運営と名誉会長・池田の「学会と公明党の私物化」などを問題点として挙げた「質問主意書」を提出している。

 「内部文書」では、その中の二点を特に抜粋して、調査で確認すべき池田の「課税上の問題」を挙げている。

<①学会は「財務」、「広布基金」、「特別財務」の寄付とは別に、名誉会長の就任記念日祝い、その他の名目で公明党の国会議員や地方議員、学会本部職員等からその都度多額の金銭を集めているという事実もある。これら贈与金に係る課税上の有無を明示せよ。

②全国に、会館、研修所などの施設が数百箇所あるが、その主要な施設には例外なく「池田専用施設」が設けられている。このような専用施設は完全に名誉会長の個人的使用に供されているものである。専用施設の維持運営費には贈与税がかかると思うがどうか>

 続く「事務運営体制」という項目にも、次のような池田に関する記述があり、池田本人に対する当局の関心が元々、高かった事実が窺える。

<東京局資料調査課において「池田大作」を準管理対象者として継続管理しており、約1ヵ月の準備期間を置けば、5月頃において調査着手が可能>

 調査を担当したのは、東京国税局直税部資料調査六課(リョウチョウ)だった。調査期間も長期を予定しており、国税当局がこの調査に本腰を入れて取り組んだことが窺い知れた。

 当時の東京国税局幹部はこう明かす。

「調査は当初から二年計画で取り組むことになっていました。最大の目的は、巨額といわれる公益会計と収益事業の区分整理がきちんとできているかのチェック。公益会計から学会幹部への私的流用の有無も調べる必要がありました。しかし、いきなり公益会計に入ると学会側の反発が予想されるため、一年目は収益事業会計を調べ、公益会計は二年目に調査するという作戦をとったのです」

【以上、今回の引用はこれまで】

何か盛り上がってきましたが、国税局対創価学会、対決結果はいかに!?

次回、乞うご期待



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