Author:紅星龍水
管理者:紅星龍水(あかぼし・たつみ)
元は道産子だったが、土佐の魅力にとり憑かれ、19で大学合格を機に土佐へ移り今に至る
(これも「苗字」の呪いか!?)。
土佐錦魚・日淡(日本産淡水魚)大好き!、放浪癖ありの三十路Comunistaであります。
座右の銘は『好い加減にいいかげん☆』
なお紅星は一応日本共産党員ですが、不良党員ですので、党本部の見解と異なる意見を当ブログに書き込むことがまま在ります事を予めお断りしておきます。
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日本文学研究者である旧知のロシア女性が、幸徳秋水の文体を論じた事がある(旧レニングラードの東洋学研究員であったガリーナ・イワーノワ女史の1959年の著書『革命家・文学者としての幸徳秋水』のなかの一章「文体の主な特徴とその源泉」)
−幸徳の文体にみうけられる多くの特徴は古典の教養によるものであって、とくに漢文直訳体がいちじるしい特色になっている・・・・・
幸徳の語彙には、古典にのっている古語と、あたらしい社会生活のなかからうまれでた新造語とが結びついてあらわれている。・・・・・
「志士」(高潔の人)、「仁人」(ヒューマンな人間)といった用語は、そうした用例の一つである。・・・・・
「真理」、「正義」、「人道」といったたぐいの古い儒教的用語は、時代の精神のなかで以前の文脈とはかけはなれた別の意味をもつようになり、日本語として表記される場合には、それと対応する英語の用語の意味をあらわすようになった。
幸徳は、これらの表現方法をできるだけ活用し、その評論や著作のなかに、中国詩文から汲みとったさまざまな芸術的手法をもちこんだのである。かれの作品のなかには、反復、頭語重畳法(アナフォラ:)、結語重畳法(エビフォラ)、対句法といった、さまざまな修辞法が、装飾的でなく、実際的な役割を演じており、思想的な想念を表現するにあたって、それをいっそう完璧なものにするのに役立っている。・・・・・
中国詩文の特色となっている対句法は、幸徳がさかんに用いた文体の一つであった。これは、概念の対比を強調し、文章にリズム感や音楽的なひびきをあたえて、思想表現をはっきりさせるのに役立ち、読者につよくはたらきかけることができた。・・・・・・
幸徳の作品は、かれが日本文学について深い知識をもっていたことを立証している。・・・・・・
幸徳の場合、封建文化にたいするかれの深い愛着は、けっして反動的な性格をもつものではなかった。かれは、伝統的な文体や形式にあたらしい内容をもり込み、それが進歩的な思想の表現に役立つことになったのである。
さらに、幸徳の文体のもう一つの特色となっているのは、西ヨーロッパ文化との接触によるもので、かれの「西欧主義」は、きわめて進歩的であった−
イワーノワは、秋水の文章に次のような賛辞を贈っている。
−幸徳が言葉や文体について要求している事柄は、誰よりもまず自分自身が守っていこうとする問題であった。迫力のあるかれの論文は、理想の深さと鋭さ、そしてがっちりとした論理をもって読者にせまり、自分の考えを説いてやまなかった。内容にこめられた思想性は、卓越した政治社会評論の技能と有機的にからみあい、一行一行が革命的情熱にあふれ、一語一語が誠意のこもった感動を伝えていた−
そして彼女が、次のことばで結んでいることに私も同感する。
−この非凡な政治社会評論家の文体は、たとえその論文に署名がしていなくても、読者の方でそれとわかるほど明白で、他人の追随をゆるさぬものがあった−
幸徳の文章の特徴は、この外国人研究者によってよくとらえられているが、しかし彼にはなお、軽妙な言文一致体(口語体)の文章を操るといった、こんにちあまり表立っていない側面があった。つまり剛速球一本槍ではなく、ゆるい変化球も投げられるピッチャーであった。その見本が「團團珍聞」茶説の執筆である。